ジョルジュ・パラントにかんする雑記帖

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ルイ・ギユー ( Louis Guilloux, 1899-1980) の小説『黒い血』 (Le sang noir, 1935) は、これまではいっさい映像化されたことがなかったのですが、今回はじめてテレヴィドラマ化され、フランスのテレヴィ局 France 3 で一昨日14日、20時50分から放映されたようです。
ニホンにいて (いや、ニホンでも見る手段はあるのかもしれないけれど、わたしにはなくて)、みられなかったことがたいへんざんねんです。

小説の主人公はフランスのいなかのリセの哲学教師メルラン Merlin。生徒たちがつけたあだ名がクリピュール Cripure。メルランがよく言及するカントの『純粋理性批判』Critique de la raison pure の略。
これだけですでに、ジョルジュ・パラントがメルランのモデルになっていることに気づいたひとは、すでになかなかのパラントおたくです。あ、そんなのはわたしだけですね (ちなみに、現実のパラントにおしえ子たちがつけていたあだ名はショーペンハウアーを略したショーペン Schopen でした)。
サン=ブリユーのリセでパラントのおしえ子だった原作者のギユーは、いささか誇張をまじえながらも、かなりの程度メルランのなかにパラントの生きざまを投影しています。鋭敏でありながらも、社会性のきわめてとぼしい人格で、気むずかしい変わりもの、ついでに風貌も独特の大男としてえがかれています。
原作はフォリオ版で631ページにおよぶ大作で、わたしははずかしながら、3年まえに買ったにもかかわらず、まだとちゅうまでしか読んでいません。
原作はとても長いだけでなく、100を超える多数の登場人物がでてくることもあり、ドラマ化しづらいもののはずでしたが、ドラマでは主要な人物、数人に減らすことによって、ひとつの作品にまとめています。
前線からは遠いにもかかわらず、第1次世界大戦はいなかのまちにも影をおとしていました。メルランの同僚は、好戦的なだけであたまがからっぽの学監バビノー、社交家で教養のある、しかし偽善的な教員ナビュセがいて、メルランとはいつもするどく対立しています。
メルランのもとのおしえ子でもある、副学監モカは、メルランをたいへん尊敬しており、リセのなかでは唯一の理解者です。かれは叛逆的な詩をかきます。
メルランは文盲のマイアといっしょにくらしています。そしてへたなニンゲンよりよほどあいしている4匹の犬たちと。
France 3 のページもふくめて、このテレヴィドラマを紹介するページは、いずれもねたばれをさけて、ほんのさわりしかものがたりを書いていません。それなので、これ以上はどうなるのかわかりません (笑)。

テレヴィドラマの脚本をかいたのは監督でもあるペテル・カソヴィッツとミシェル・マルタン。かれらは『黒い血』を映像化する構想をなんと1960年代から話しあっていたそうです。
リュションで2月5日から11日まで開催された国際テレヴィ映画フェスティヴァルは、この作品にふたつの賞をあたえています。主演のリュフュに男優賞、そしてカソヴィッツとマルタンに脚本賞。




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